告発 / マーク・ロッコ

 1994年の作品。ちなみにニコニコにもある。この映画の良い点からいえば、まず、ケヴィン・ベーコンの演技は文句なく素晴らしい。また、かつてアルカトラズ刑務所にて行われていた非人道的な虐待行為を風化させないためのリマインダーとして働く効果がこの映画にはある。

 しかし、史実とはかなり異なった脚本が描かれている点が大幅マイナス。主人公のヘンリー・ヤングは実際には以前から殺人等を犯していたのであって、「妹のために5ドル盗んだだけなのに…」云々は全くのファンタジーに過ぎない。もちろん、映画は物語を描くものだから、脚本が実際の史実に基づいていなくともまったく構わない。だが、純粋なファンタジーとしてみたとき、この映画のストーリーラインはお粗末だといわざるをえない。

 ヘンリー・ヤングがひたすら「虐げられる者=弱者」として描かれている点が痛すぎる。これは多くのハリウッド映画に共通する欠点なのだけれども、なぜ<正義の側に立つ者/卑劣な悪者>という二分法でストーリーを作ってしまうのだろう。人間はそもそも、心の内部に、善も悪も、混沌も正義も、利他心も利己心も、すべての矛盾するものを抱えてドロドロしている存在なのであって、<正義の側に立つ者/卑劣な悪者>という二分法をスパッとやられると、シラけてしまわざるをえない。綺麗な二分法が成立していると、「それはどこのユートピアのおとぎ話だよ」と苦笑してしまうし、感情移入ができないのだ。

 アルカトラズ刑務所の虐待をダシに使うな、と言いたい。もし本気でアルカトラズ刑務所の世界を描きたいならば、もっと混沌とした人間の心理をきちっと描写して欲しかった。刑務所の所長や副所長は本当にただの「悪人」だったのか?なぜ彼らは受刑者を虐待したのか?彼らに虐待を促したその「残酷さ」を、今を生きるわたしたちも抱えているのではないか?そのような(皆が抱えている)人間の暗部を、彼岸のものではなく此岸のものとして、すべて平等にさらけ出して欲しかった。悪者仕立て=スケープゴートにして「はいおしまい」、とするのではなく。よって、映画としての評価には厳しい点数を付けたい。感動など決して出来ない。というか、この作品に感動してはいけない。

58点

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