12人の怒れる男 / シドニー・ルメット

 1957年に公開された、陪審員たちのやりとりを演劇的に描いた、呆れてしまうほどの名作。ニコニコ動画にもある。これを観て「よくわからない」だとか「時間の無駄だった」などと感じる人はおそらくいないのではないか。もう、語るのが馬鹿らしくなってしまうような作品。だから、少しだけ。

 この映画はとても面白いのだが、実はかなり非現実的な描写を行っている。なぜなら、無罪を主張する側は<論理・理性・証拠>に則っており、有罪を主張する側は<感情・偏見・思い込み>に則っているという形で、綺麗に二分法が成立しているからだ。この映画に興奮してしまうとき、おそらくわたしたちは、「偏見に満ちた感情的な馬鹿をあざ笑う」というカタルシスを得ている。この映画の愉快さのかなりの部分は、「バカを安全地帯から嗤うことができる」という、ハリウッド的な二分法の仕掛けに由来していることには注意したい。(一見したところよくありそうな話だけれども、実際にはあまりない状況だと思うのだ、アレは)

 まぁでも、演劇的な舞台だと考えれば、これは面白いです。本当に。あと、カメラワークに注目。カメラの長回し(短くカットして編集せずにひたすら1ショットを続けること)が、めちゃくちゃこの映画の魅力を引き立てている。カットして場面場面をつなぐのではなく、リンゴの皮を剥くようにぐるぐるとカメラが長時間1ショットを撮り続けるからこそ、男たちの心理的な交錯が生々しく伝わってくるんだよなぁ。オープニングの長回し、そして陪審員が徐々に引き上げていくラストシーンの長回し。この二つは要チェック。痺れた。

93点

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