es / オリヴァー・ヒルシュビーゲル

 2001年ドイツの映画。ニコニコにもある。社会心理学者のジンバルドーが行った「スタンフォード監獄実験」から着想を得たものだが、映画のストーリーはかなりフィクション。

 あのねぇ…と言いたくなる駄作。もともとスタンフォード監獄実験は【刑務所を舞台にして、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験】だったのだが、「普通の人」が徐々に狂気に陥っていく様を繊細に扱った心理描写がほとんどなされていない。スタンフォード監獄実験をダシにした、ただのドンパチアクション映画じゃないですか。いまだにこの映画を「実話」だと勘違いしている人もいるようだけれども、そんな人はスタンフォード監獄実験の詳細をちゃんと読んでください。実際の実験の方がはるかに面白い。

 あと、教授の心理描写がなされておらず、忙しいので実験を放置していたかのごとく描かれていて、しまいに撃ち殺されてしまうというストーリーラインは、アクションとしては王道なのかもしれないが、ドラマとしては陳腐きわまりない。彼の内面をきちっと描いてほしかった。それが一番興味深いところなのに。

 ジンバルドーは、実際の監獄でカウンセリングをしている牧師に、監獄実験の囚人役を診てもらい、監獄実験と実際の監獄を比較させた。牧師は、監獄へいれられた囚人の初期症状と全く同じで、実験にしては出来すぎていると非難。看守役は、囚人役にさらに屈辱感を与えるため、素手でトイレ掃除(実際にはトイレットペーパの切れ端だけ)や靴磨きをさせ、ついには禁止されていた暴力が開始された。ジンバルドーは、それを止めるどころか実験のリアリティに飲まれ実験を続行する。(参照

 緊張状態に置かれている看守役のみならず、研究者そのものが「リアリティに飲まれて実験を続行」してしまう様こそが、人間の狂気の最も興味深い部分を表象していると思うのだけれども。つまり、一見この映画は(ただのアクション映画ではなく)人間精神の暗部を垣間見せてくれるようでいて、実はただの「ダイハード」レベルのお話を描いたにすぎない。さらに、「主人公の彼女のストーリーライン」も余分としかいいようがない。映画の魅力を増すために何ら貢献していない。駄作。

55点

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