マルコムX / スパイク・リー

 1992年、アメリカの作品。ニコニコ動画にもある。黒人のカリスマ的指導者、マルコムXの生涯を追った伝記的作品で、3時間22分もある超大作。長い!でもまったく飽きさせない。最後まで食い入るように観てしまった。映像も脚本も音楽も、良く練られている。

 マルコムXの生涯を丁寧に描いており、「伝記」として本当に立派な作品だ。3時間半もの大作を作ることを許されたのはスパイク・リー監督だからだろうけれども、彼は与えられた時間を存分に活かしている。さまざまな歴史的人物について、これだけの密度とヴォリュームを備えた伝記的映画が、もっともっとたくさん作られれば良いのにな、と思う。

 マルコムXがひたすらカリスマ的に描かれていないところが素晴らしい。

 マルコムの中には、身を切り刻むような、激しい恐怖心と、生命の危機をわざわざ呼び込んでいるみたいに、思い切った行動をしないではいられない、むこうみずな心とが、同居している。恐れおののきながら、あるいはそれ故に、「敵」の前では、自分を精いっぱい大きく見せようとする。虚勢によって恐怖が中和できるとでも思っているみたいである。(参照

 この引用部はマルコムXの特徴をかなり的確にあらわしていると思う。この映画では、隠しきれない恐怖心を持ち、それゆえに虚勢を張り恐怖を打ち消そうとするマルコムXの生き様が、実に良く描かれているのではないか。理念に燃えた聖人としてではなく、さまざまな出会いや偶然を積み重ねる中で(黒人指導者という)社会的役割を獲得していく人間くさい男としてマルコムXを描いた監督の力量は、なかなかのものだ。確たるリアリティを持った人間の生き様が、じわじわと伝わってくる。

 ほんとうに誠実な伝記的映画。こういう作品、もっと増えれば良いのに。あと、マルコム役のデンゼル・ワシントンは、マルコム本人に似すぎです。ここまで似ていると、「演技」の臭いすら嗅ぎ取れなくなってしまうよ。

83点

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