黒猫・白猫 / エミール・クストリッツァ

 1998年の作品。ニコニコ動画のリンク。もう本当にこの映画は素晴らしい!陰気な気分が鮮やかに吹っ飛んだ。ただ、クストリッツァ監督の映画は、観る前にあらかじめストーリーラインを頭に入れておかないと訳がわからなくなる場合が多いので、【ドナウ川のほとりで生活する(ジプシーである)マトゥコとザーレの親子。石油を買ったつもりがだまされて水をつかまされ、挽回とばかりに一攫千金を狙って列車強盗を企てる(親の)マトゥコだったが、さらにヘマを重ねたせいで、(息子の)ザーレは新興マフィア・ダダンの妹と結婚させられる羽目に…。(参照)】というあらすじを押えつつ…。陽気なマフィアのどたばたコメディ劇。

 この映画で描かれているのは、なんといっても生の躍動(エラン・ヴィタール)だ。弾け飛ぶような生の力が狂騒的にドタバタと踊り回っている様子を収めたフィルムなのだ。生の躍動の生々しさを演出するために、動物がふんだんに暴れ回っている。人間が生きていて、動物も生きている。生物は動く。動くからリズムが生まれる。リズムが生まれれば、あとは踊るしかない。黒猫と白猫が駆け回ることによって、人間の生と動物の生が、シームレスに踊りを奏でていくのだ。

 隠されたテーマとして、【父と子】、【母と娘】、【お金と愛】、【生の世界と死の世界】などなど…色々な物語が展開される。しかし、まったく重苦しい話ではない。「生とはなにか…」「愛とはなにか…」などなど、「深遠なる哲学」を大げさにご開陳するような映画では決してない。皆が酒を飲み音楽に合わせてダンスを奏でているうちに、人間か動物かを問わない「生の躍動」として、それらのテーマが軽やかにぐるぐると円を描いていくのだ。

 息子のザーレガが恋をしてしまった女性が、美しいのだけれども、とてもたくましい美しさである点にもグッときた。華奢な女性ではなく、骨がぶっとい、本当にたくましい美しさなのだ。ため息がでるくらいに美しい(たとえばロシアなども含め、スラブ圏の「強い」女性は実に魅力的ですよね)。心の底から祝福したくなるような、とっておきの映画。音楽も抜群。個人的に、クストリッツァ監督の映画で一番好きな作品なのです。

92点

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