3 月 29

 今年のFILMEX、朝日ホールにて。監督自らのティーチ・イン付き。クルド地区の、圧倒的な「地雷」感覚に打ちのめされた。地雷に囲まれて生きる、音感覚と精神感覚。監督の他作品もチェックしてみたい。

83点

3 月 29

  台詞の全くない映画。とはいえ、サイレント映画ではない。風の音、砂の音、鉄道の音、子供の泣き声、叫び声…それらの「音」は効果的に配置されている。しかし、台詞がない=字幕が一つも出ないという特質は見落とせない。ワンショットが実に絵画的だ。あるいは、芸術写真的だといってもいいかもしれない。しかし、扱っているテーマは抽象的なものではない。季節労働者として働く子供の、絆、愛の力強さだ。その力強さは、子供のまなざし、あるいは叫び声の強度によって表わされるだけである。だが、それだけだからこそ、そのまなざし、叫び声の鋭さといったら。神がかり的な雰囲気まで漂わせている。「言語」としての音声をすべて削ぎ落とし、ただデシベル(音)として響く音声にすべてを任せたことで、音自体が持つ本来の衝撃が「剥き出しのままそこに在る」という感覚だ。さらにいえば、観客の注意を惹きつける「言語」が介在しないため、映像ですら「剥き出しのままそこに在る」。自然の中に人間が見出す(創り上げる)「自然の」美しさ、まなざし、叫び声、風の音、砂あらし、雨が持つ強さ。それらがとにかく美しく絡み合い、それらシャワーの中で、観る者は至福の時を過ごす。まさに「映像詩」で、詩であるからこそ、何度でも観たいと強烈に思わせる異色の作品だ。(’02 2/23)

88点