3 月 29

 別名、『蛮族の侵入』。邦題はクソだが、掘り出し物だ。凄まじく観やすくてかつ深い映画。アカデミー賞受賞に監督は不満を持っていたようだが、まさにカンヌ的/アカデミー的要素が監督の力量によって一点に収束してしまった映画だ。つまり面白くかつ深い。なぜならストーリーラインがはっきりしているけれども物語が多方面に拡散しているから。末期ガン=死が医師により宣告され、父親が死ぬまでの数週間の物語。その間にさまざまな蛮族が侵入してくる。父の教養と無邪気な馬鹿さへ、息子の経済力と目的合理性が侵入する。9.11が暗示するアメリカ帝国への蛮族の侵入。日常の理性へのドラッグの侵入。通底奏音として流れる人から人への愛、男から女へ/女から男への愛。セックスも含めた結びつき。だがとにかく、父親が最期に息子に放つ言葉が限りなく美しく、それがカタルシスをもたらす。

――「おまえみたいな息子に育てろよ」

89点