3 月 29

 ナボコフの小説も良いけれど、キューブリックが撮った映画版も素晴らしい。ロリータの女優が可愛い過ぎる。これはやばいね。それだけで観る価値がある。彼女に誘惑されたら全人生を投げ打って追いかけると思う。でも、彼女はどう見ても10代後半で、18歳前後といえば万人にとってストライクゾーンな恋愛対象になるわけで、だから、この映画では、ロリコン独特の奇特な世界が描かれていないとはいえる。その点は残念。つまり、ナボコフの小説は別にして、キューブリック独自が描いた世界観としてみれば、この映画は評価できると感じる。

85点

3 月 29

 1980年。「終電車」というタイトルは、ナチス占領下のフランスで、夜間外出禁止令が下されていたため人々は「終電車」に殺到した、というところから付けられている。もうね、これも本当に圧倒的な作品で、ある意味トリュフォーのNo1作品と言って良いかもしれない。3つだけ。一つ、歳を重ねてもあくまで美しいカトリーヌ・ドヌーブ。美しさといっても、「圧倒的な存在感の宿った美しさ」がドヌーブの特徴。アイドルの美しさとは根本的に違う。もうただ、自分が捉えられてしまう。ロックオンされてしまう。二つ、設定の巧みさが、極めて深い陰影を映画全体に与えていること。ドヌーブと、演劇の舞台上で恋人役を演じる若い男優、および(ユダヤ人のため)その舞台の地下に身を潜める演出家である夫。どちらにもドヌーブは惹かれている。揺れ動く。その力学が凄い。どちらに対しても、完全に恋心が満たされることがない。<現実/演劇>および<地上/地下>という二つの境界線が、ブレーキになっている。その境界線は互いに影響を与えながら、揺らぎ、ドヌーブの美しさの存在感はさらに増してゆく。
 
 ラストシーンの撮り方も、映画史上に残るものといえるだろう。もうご覧になった方には注意して観て欲しいのだが、はじめは病院が現実のものとして撮られている(背景に見える向かいのビルで実際に人が煙草を吸っている)が、ワンカットの切り返しで、その背景が舞台上の描かれた大道具にすり替わっている。映画だからこそできるウルトラCの演出法だが、これは、<現実/演劇>の境界線のあいまいさを、トリュフォー自身が巧みに描いたものとして再解釈できるのではないだろうか。戦争もきちっと描かれている。文句なし。圧倒的名作。

94点